正座させられた教師二人と一目で高価とわかる椅子に腰掛けた理事長一人。因みに教師一人が真っ青な顔を俯けている。
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「何か言うことは?」
「ごめんなさいー・・」
「あー・・すまねぇ」
一人はしょんぼりと、一人が頭をかきながら言った。
謝りはしても理由を話そうとしない二人の様子に、ふぅ、とため息をついて頬杖をつくと、
「ねえ、何があったの?」
と優雅に理事長が言った。心配そうな物言いとは逆に顔はとても楽しそうに笑っている。
二人でむっつりと目をあわせると、科学教師が苦々しく呟いた。
「隣の人が」
びし。人差し指を体育教師に向けて、
「ユゥイより俺の方が料理が美味いとか言い出しやがりました」
への字に曲げた口から出てきた言葉が予想外で、流石の理事長も・・は?という言葉しか出てこなった。
恋愛関係かと目星をつけていたため、がくりとテンションが下がった。意味不明である。
「和食は流石に弟もお前に敵わねぇなって言っただけだ。俺は」
心外だというように体育教師も呟いた。
ますますもって意味がわからない、と理事長は頭を振って見せた。
「料理上手ね、ってほめられたんでしょう?」
「・・・・はい」
「何が嫌なの?」
「だって、ユゥイのご飯より俺の方が美味しいって言ったからー?」
自身でもわからない、というように語尾は疑問形で科学教師が返す。
その様子にため息を1つ落とすと、
「まぁいいわ。黒鋼先生」
「なんだ」
「プール掃除をお願いねー」
「あぁ!?」
「あら嫌なの?同僚殴っておいて・・・しかも流血沙汰おこして生徒を卒倒させといて」
「いやそれはこいつも同じだろう!?」
「同じに見えて同じじゃないの。とりあえずお願いね」
男ならびしっとやって頂戴ね。と美しく笑いながら親指でプールを指し示す。
どうせ後々生徒がやることになるのだから、先にヘドロはかきださなければならないのだ。
畜生と呟いたと思ったら、ずかずかと怒りを込めた足取りで体育教師は荒々しくドアを開けて出て行った。
「ファイ先生」
「何ですかー?」
只でさえ苦手な正座をさせられた上、数十分同じポーズだったので震えている科学教師に近づいて、
「足をマッサージしてあげる!」
ぷるぷるとさらに真っ青な顔で首を振った科学教師の足を、理事長は楽しそうに掴んだ。