ふえーん、と泣きながら兄が抱きついてきたので、大丈夫?と同じ顔の弟は肩をさすってあげた。
「痺れた足は放って置かないと駄目なんだよぉ」
「そうだね。ヘタに触ったりしたら痛いよね」
「なのに侑子先生がー」
「つついてきたの?」
「うん」
「それは災難だったね」
よしよし、と頭を撫でてから、このファイとの会話は、僕しか切り返せないんだろうなぁ、とぼんやりと考える。
こういうときのファイはいつまでたっても子供だ。甘える、というのがとても素直に出る。
この前黒鋼先生が、アイツは甘えたがらない、と愚痴っていたから、ちょっとした優越感のようなものを感じつつ。
あ、
「そういえば」
「何ー?」
「殴り合いしたの。黒い犬と一緒に」
「うん」
久々だったから、ちょっと顔面も殴っちゃった。と舌をちろりと出す姿は明らかに反省していない。小さくため息をついて、でこピンを一発。
「いたいっ」
「先生はそういうことをしちゃいけません」
「わかってるよぅ。でもあの人がー」
「あの人が?」
んー、と少し考えるような仕草をしてから、やっぱりなんでもない。と微笑んだ。
「あ!!!」
「え、何」
聞くより先に声をあげた上に見る見る顔が青くなっていくので、どうしたのかと首を傾げる。
「ユゥイ」
「うん」
「星ちゃん先生の薬か何か飲んじゃったんだー・・・・・」
「それは・・・また・・・」
死にはしないと思うよ。と言うと、何が起こるかわかんないのが怖い。とぎゅうときつく抱きしめられた。