ここはどこだろう。
見渡す限りの白。数メートル先には・・・鏡?いや、違う。ファイだ。僕と今ガラスを挟んで向かい合っているようだ。
しかし、よくよく見てみると、その姿は相当奇天烈で、もこもことしたコートに、大きなベルト、そして左目には眼帯。
びっくりして微動だにできずにいると、ファイが普段見せることの無い真剣な表情で、
「ファイ!!!!!」
と大きな声を上げた。
思わず、・・・は?と小さく呟いてしまった。ファイがファイって言ってる?え、日本語の肯定をあらわす「はい」の事だろうか。いやでも・・・。
なんとも言えずにそのままぼーっと立っていると、あせったようにファイがロシア語で「そこで待ってて」だとか「どうしよう」だとか、自分以上に混乱したように叫んでいる。
そして、ぼろぼろと右目から涙を零しながら、こちらへ手を伸ばした。
パキン
大きな音を立ててガラスが割れた。きらきらと光を反射しながら、破片が宙を舞う。
あぁ
きれいだなぁ
幻想的な光景に、フッと自然に頬が緩んだのが自分でもわかった。
「会えないの・・・・・?」
なおもぼろぼろと涙を零しながら、ファイが悲しそうに呟いた。
へんなの。
鏡を見たら会えるよって、空港で笑って言ったのはファイだったじゃない。
徐々に視界が黒く染まってきた。僕の手を掴もうとしたのかファイが右手を伸ばしてきたけれど、どういうことかすり抜けてしまった。
あぁそっか
コレは夢なんだ。
「ユーウーイー!」
「んー・・・」
瞼をあけると、限りなくファイの顔が近くにあった。
「ファイ、どうしたの」
「だって、今日六時に起こしてってゆってたじゃん」
朝ごはん、出来てるからね、そういってファイが微笑みながらドアを開けて出て行った。
夢の中のファイも、笑えてたらいいなぁ。
ぼんやりと、考えながら、すぐ行くよー!と服を着替えにかかった。
なくわらうなくわらえ
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うれし泣きだから のユゥイ視点。