すき

・・・・スキ

・・・・・・・・・・・・・・・好き

愛読している漫画雑誌の中にさえ、時たまでてくる単語。作品によって、出てくる回数も、場所もまちまちだが使用方法は皆一緒である。

「〇〇のことが(例の単語)なんだ!」または「〇〇のことが、(例の単語)なの!」

なお、この場合の“例の単語”は漢字を織り交ぜたものとする。

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はぁ、と盛大にため息をついて、忍者は思った。

すきって、何だ。

 

瞬間、ぽっと頭に出てきた言葉に自身で驚き、全身全霊をかけて振り返った。後ろで日本国の姫が、「あらあら」とかわいらしく黒い笑みを浮かべていそうな気がしたからだ。

もちろん、声には出していないが、あの姫なら読心術でも何でも使えそうな気がしてならない。

事の発端は、夕飯後。いつものように魔術師のうまい手料理を食べてから。

今日も羽を探しに駆け回った小狼は、かけたソファで舟をこいでいて、その横で座っていたサクラ姫も、少年にもたれ掛かるようにして規則正しい寝息を立てていた。

白い饅頭もぽてり、と規則正しく動く少女の腹の上で幸せそうに眠っていた。

その様子を見て、幸せそうに魔術師が笑うものだから。幸せそうにみんなをベッドに連れて行ってあげてというものだから。

魔術師の肩を掴んで何かを言う一歩手前まで陥ってしまっていた。

もちろん、自分で何を言おうと思ったのかわからず言った言葉は「・・・・は?」という間の抜けたものだけれど。そしてそれを聞いた魔術師の言葉も「・・・・は?」だったのだけれど。

というか“何か”を言おうと思った口は、何故「す」の形をとっていたのだ。

というか、というか、

何故「好き」と、言おうとしたのだろうか・・・・・!?

おもわず、うがぁぁあああああああああ!!という雄叫びめいたものをあげてしまう。

こうして考えても意味がよく理解できていないというのに、あの時確かに自分は「好き」だといおうとした。のだろう。多分、おそらく、推測するに!!

 

うああぁぁああああと心の中で呟いてつもりが声に出ていたらしく、布団の上で寝ていた白饅頭がうぅーん・・と身をよじったので、起こしたか、と一瞬身を硬くする。

しかし意識が覚醒するまでは行かなかったらしく、すやすやとまた寝息を立て始めた。

安心したようにふぅ、息をついてから、別に悪いことなんてしてないじゃないか!という当たり前の事実に気づいてまたあぁぁあああと心の中で叫ぶ。

 

頭の中であはは、と楽しげに笑う魔術師の顔がちらついた。

 

くそっ。

アレのことを考えるだけで思考がそれ以上回らなくなる。

「恋煩いは若いしるし!!!!」

「ハァ!?」

いきなり発せられた自分以外の言葉に、驚いて振り向く。するとそこには叫び終わってぽとり、と布団の中に白饅頭が突っ伏しっているところだった。

寝言だったらしい。

それにしても、気になる言葉を・・・・・

・・・・・・

・・・・・・・って

「恋煩いぃぃぃぃぃい!!?」

思わず叫んでしまった言葉にしっかりと起きてしまった白饅頭が、「うるさいよぉ」とぴょんと跳ねた。

 

 

 

 

 

気づけば、え。

 

 

 

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モコちゃんは最強だったら良いな☆s

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