ふにふに。
いくら触っても、その感触は無くなったり、他のものになったりはしなかった。
「どうしても、この耳が、消えないんだよなぁ・・・」
「ち?」
かわいらしく小首をかしげるチィには、明らかに普通の人とは違った、耳が付いていた。
彼女は自分が作ったのだけれど、もちろんコレはつける気など無かった。というか、何で付いているのか自分でも分からない。
母に、似せてあるのだから。
「耳が、気になるの?」
触れられる指がくすぐったいらしく、少し身をよじったので、ぱっと手を離した。
「んー・・・。まぁ、聞こえ方に異常が無いんなら、別にいいんだけど」
「チィ、ちゃんとファイのこえ、聞こえるよ」
「ただ、気になっただけだよー。何でオレのと形がちょっと違うのかなって」
記憶の中を探っても、あの時自分は母を動物と混合したりはしていないはず。
なぜだろうか。
うーん?と、首をかしげると、
「だって」
不思議そうに、チィは言った。
「チィは、チィだもん」
そうでしょ?と目をぱちぱちとさせて、彼女はふわり、と宙を待った。当たり前のことだ、とでも言うように。
「チィは、他の人じゃないんだもん」
ゆうゆうと浮遊を続ける彼女の言葉に、一瞬どきりと心臓が跳ねた。
深い意味を込めてはいないのだろうとは思うのだけれど。
わらって、そうだね、というと、チィも安心したようにわらった。

失われたものをもう一度、と思うのは、いけないだろうか。

 

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