吐き出した息は真っ白で、ああ、季節が変わったのだと人々に感じさせるようだ。

三人とモコナだけになってしまった旅は、何かがかけてしまったようでもあったし、

すべてがぴたりとかみ合ったようにも思えた。

ぼんやりとそんならしくないことを考えながら、日本国に少し似ている部屋を出る。

『桜荘』 この阪神共和国で借りた家とそっくりな建物には、そんな名前がついていた。

ここは日本国の冬より少し寒い。

もういちど息をゆっくりと吐き出して、歩を進める。

皮で出来た靴を履いて外へ出ると、ちらちらと雪が降っていた。

「おい」

部屋の入り口のすぐそばにある階段を下りると、金色の髪がふわりふわりと揺れていた。

 「あ、黒るー」

こちらを振り返ると、にこりと青い瞳が暖かく微笑む。両の手のひらを空に向けたまま立っているので、思わず上を見遣る。

灰色の雲が一面に張っているので、多分二、三日はこのままだろう。

振ってきた一粒の雪を目で追うと、吸い込まれるように魔術師の手のひらに落ちた。

「寒くねえのか」

「うん」

本当にそう思っているようで瞳は揺れていない。

そうあの国を思い出せば、たしかにここよりもずっと寒かった。

しかし、

「わっ」

ばさりと覆いかぶさるようにして白い体を抱きしめる。

開かれた目は驚いたようにまん丸だ。

 「な、なに?」

 「俺が寒い」

腕に力を込めると、苦しかったのか少し身をよじる。しかし諦めたように力を抜くと、そのまま頭をこちらに預けた。

ふふ、と柔らかい笑い声が耳をくすぐる。

「子供みたい。黒様」

ひらひらとふる雪は、勢いを緩めることも、強めることもせずにただただ地面へと吸い込まれていく。

冷たい風が頬をなぜて、一瞬だけぶるりと体が震える。

「なんかさ、」

青い瞳が雪を見つめながら言う。

「花びらみたいだな、って思ったんだ」

 

 

 

雪の

 

 

 

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ただ単に黒鋼は寒いのにファイは寒くないっていうのが書きたかったんです

 

 

 

 

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