※日本国END

 

 

食紅で絵の描かれた氷砂糖を物珍しそうに眺めると、「この氷は冷たくない!」と嬉しげに笑って、ぽい、とファイは口の中にそれを放り込んだ。

ふふ、と笑う顔がどうにも可愛いので、氷砂糖を送った本人が、思わずファイの頭をなでた。

 「あの、蘇摩さん?」

 

困ったように遠慮がちにファイが声をかけると、はっとしたように、

 

「すみません」

 

とあわてて手を引っ込めた。

 

その様子を横目で見ながら黒鋼が、まぁ気持ちがわからんでもない、と小さく呟いた。

「で、何でいきなり菓子持った奴らが入れ替わり立ち代りやって来て、さらにソレらを食わせた挙句、こいつの頭をなでてから出て行くんだ」

「あぁ、それは・・」

そこで蘇摩はちらりとファイを見て少し考え込んで、

 

「ファイさんが居てくださったから、皆、怪談で怖い思いをせずにすんだんです。なので、そのお礼かと」

 

核心を少々ぼかして述べると、あぁ?、とさらに黒鋼が首をかしげた。

「蘇摩さん、コレは何ですか」

 

自分には関係の無いことだろうと思って、まったく話を聞いていなかったファイが、横から手のひらを差し出した。

そこにちょこん、と乗った氷砂糖には蟹が描かれている。

「蟹ですよ」

「かに? でもかにって、白いろでしたよね?」

知世姫が食べてたのとなんだか違う・・・?と難しそうに首を傾げたようすに、思わず、蘇摩と黒鋼両方がファイの頭に手を伸ばした。

しかし、黒鋼がニヤリと不敵に笑って、当然だというように先にファイの頭をくしゃりとなでた。

 

「・・・ファイさんが居ると誰でも怖いものなんて無いと思えるというか・・・・」

 

我慢しきれずに黒鋼の手を押しやると、蘇摩は驚いて目をぱちくりさせているファイの頭をゆっくりなでた。

 

 

 

 

 

いもの知らず

 

 

 

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 夏の日に の続き。

まったく関係ないけれど氷砂糖がいたく好きです。方言で言うならこおりざた。うん、特に意味は無い。

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