ころん、と口の中で転がった甘い砂糖の塊としか思えないものに、思わず眉をしかめた。
「甘ェ・・・」
「そりゃぁ、そういうんもんだからねー」
オレは好きなんだけどなぁ。そう言って、白猫は同じものをぽんと口の中に入れると、おいしい。と言って目を細めた。
「ていうかさー本来は君が全部残さず食べるべきなんじゃないー?君が貰ったんだから。食べていいのかなー、オレ」
「貰った本人が、良いっつってんだから良いだろ」
「そっかなぁー。くれた女の子に悪い気がするんだけどー・・・」
そう言いつつ、また口の中にチョコを入れる。するとまぁ、黒ぽんのなんだから、黒ぽんも食べないとねー。とこちらの口にも放り込んできた。
下に感じる甘い味に眉間の皺が増えているのが自分にもわかる。だが、どうしても苦手なのだから仕方あるまい。
その様子に白猫が、不味そうに食べるね、と苦笑した。

ようやく口の中の塊が大方姿を消し、はぁ、と小さく息を吐いたところで、ぽん、と口の中にまた塊が放り込まれた
何をしやがる、と恨めしげに相手を見遣った時、あることに気が付いた。
「・・・・・・?」
甘くない。さっきのチョコと混ざって判別が付き難くなっているが、甘いどころか苦い。そして美味い。
ふと、白猫の手を見ると、さっきの桃色の箱ではなく緑色の箱が握られていた。
「不味かったら、別に、吐いてもいいよー?」
「吐かねぇ。食う」
「・・・そうー」
珍しいねー。自分から食べようとするなんて。と言って、甘くない塊をまた口に放り込まれる。しかし、自分は食べようとしない。
目線も少々下向きだ。

あぁ、矢張り。

「お前から貰ったもんは食う」
そう言った瞬間、白猫は驚いた表情で顔をあげ、その顔がまるで熱湯につけた温度計のように一気に赤くなった。
「気、づいちゃったんだぁ・・・・」
「当たり前だろ」
「・・・・・・・・恥ずかしい」
「そうか」
「頑張って作ったんだー。君が、甘いの嫌いだから」
「そうか」
「・・・・・・・・恥ずかしい」
「そうか」
クシャリ、と撫でた金の髪が部屋の明かりで息を呑むほど美しく光った。

 

 

くないゆえに

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