いつもの部屋で、あぁ、そういえば、こないだ懐かしいものを見つけたんだ、と言って科学教師から、1つの石を手渡された。
いや、石というよりは、宝石のほうが近いのか。
微妙に茶けた砂っぽい部分の付いたソレを手にとって見ると、さっきまで濃かった青が水色に変化したことに驚いた。
「すげぇ・・・」
思わずこぼれた言葉と同時にまた色が変わった。さらに淡い水色になる。
くるくると変わる色が面白くて、上下に上げ下げしたり、手のひらで転がしてみていると、
横から科学教師の横文字が多用されている説明が入った。
「ぺナントカ」だとか、「キショウ」だとかを言われてもなんだかよく分からないので、おう、とだけ返すと、何も言わずに、苦笑だけをこぼされてしまった。
悪かったな。生憎こちとら男にしちゃ珍しく文系なんだよ。と一人胸のうちで反論をするが、
そもそも目の前の男には「得意科目」というものが存在していないため、それを言うとと此方が逆に悔しくなることは予想できるので決して口には出さない。
「その石、人に貰ったんだよ。男の人ー」
「そうか」
「惚れた女性に宝石を、っていうなら分かるけど、知り合った男に原石を、なんだから、相当変わってると思わない?」
そのときに、たからかにピー――ッというあからさまな電子音が風呂が焚けたことを告げたので、じゃあ、といって、科学教師が立ち上がった。
ふと、そのとき、気が付いた、
「あ、」
「?」
「お前の目の色!」
「え」
思わず科学教師の腕を握り、手の平で光る石を顔の近くまで持っていくと、科学教師の眼とまったく同じ色で輝いていた。
凄い。
コレを贈った奴は凄い。感心した。いろんな感情が浮かんでいたが、何より、見つけた奴、凄ぇ。
・・と、ちょっと待てよと記憶を探るまでも無く、今の現状を考えると、
「・・・・黒ぽんって時々凄くかわいいよねー」
「うるせぇ!」
「オレ、思わずこないだ幼稚園で「かわいいお花見っけたのー」ってお母さんの下へ笑顔でかけて行った子供のことを思い出しちゃったよー。
いやぁ、ほほえましかったなぁ〜。今さっきの黒りんたレベルにー」
待て、それは、今さっきのオレの行動は五歳児並ということか。といっても、自分の行動を振り返ってみたら、反論の仕様が無い。
あぁそういえば確かに幼稚園のころ俺もやったよ、虫を捕まえるなり母の下へ笑顔で報告しに言ったよ。嬉しかったのを見せたかったのだから仕様が無いだろう。
というかもう今さっきの行動がかなりそれに近く感じられて、昔の自分に蹴りを入れたくなってきた。
新しいことを見つけたことが嬉しかったんだ。という反論が浮かんだが明らかにこれ幼稚園児じゃねぇか!と自分に突っ込みを入れる。
「ファイかーさんと一緒にお風呂入るー?」
「いい!」
半ば叫ぶようにして返事をすると、遠慮しないでいいからねーと笑いを含んでそう言って風呂場へ行ってしまった。
追い討ちをかけるんじゃねぇ!と叫びたいのも山々だが、それを言うとさらに何か言われそうだ。
ああ。
脱力して屈みこんだ足元に、あいつと同じ色に輝く石が転がった。
嬉しさを分けたいと