がたかた・・・・


ドアを開けると、いつもは全然気にならない程の音が、教室全体に響いた。

「すいません」

おもわず、謝罪の言葉が零れ出る。忘れ物をとりに来たのだから、別に間違っているわけでないと分かっていても。

同じことを思ったのか、くすり、と小さな苦笑いが教室の空気を揺らした。

「なんで謝るのー?」

「すいません・・あ」

「ほらー、言った傍からー」

あはは、といつもどおりの孤が描かれて、ほっと肩の力を抜いた。何を緊張していたんだろう。ファイ先生とユゥイさんじゃないか。

「あれ?小狼君、今日はサクラちゃんと一緒に帰るって言ってなかった?」

窓際にもたれ掛かった二人の青い瞳が、こちらを不思議そうに見ているので

「忘れ物を取りに来ただけですから」

と宣言してから、まっすぐに自分の席へと歩を進めた。すると納得した様子で、二人はまた、入ってきたときと同じように、

窓の外を眺め始めた。

黄色に光る、グラウンドを。

「あの、」

「んー?」

ファイさんが、こちらを振り返り、何?というように小首をかしげた。でも彼の片割れは相変わらず外を眺めているので、

ますます不思議に思う。

「外に、何があるんですか?」

いくら目を凝らしても、黄色いグラウンドしか見えない。

テスト週間で、部活停止だから、誰かが走り回っているということもないだろう。

「なんにもないよ」

「えっ」

「だって、今日部活停止だもん。誰もいないよ」

小狼くんだって知ってるでしょー?と逆に不思議そうに聞かれて、それは、知ってますけど、と言葉を濁す。

聞きたいのは、そういうことではないんだけれど。

でもなんだかこれ以上深く質問するのが憚られて、言葉を言えない。

数秒の間が空いた後に、気まずくなって、

「さようなら」

と、机の中の科学の教科書を持って、逃げ出してしまった。

いや、正確には、逃げ出そうとした。だろう。途中で動けなくなってしまったから。

ドアを閉めようとした瞬間、ぶつかってしまったのだ。

左右対称に、同じ笑みを浮かべて、同じ高さに手をつき、同じ角度に首をかしげた、二人の視線と。

思わず、息をすることを忘れてしまう。その、完璧なまでの美しさに。

ドアに手を掛けたまま動けずにいると、

「「バイバイ。気をつけて帰ってね」」

同じ口の動きで、言葉を言われ、

「どっちが、どちらなんですか」

とかすれた声が出た。

いつもなら、服でわかるじゃないか、と一蹴されるだろうことが、今、本気で分からなくなった。

すると、くすり、と同じ音を漏らして笑って、

「「面白いことを言うね」」

というと、同じ速さで手を振って、サクラちゃんが待ってるよ。と茶化すように右の彼が言った。

瞬間、あいまいに微笑んで、すいません、失礼しました。と勢いよくドアを閉めて、廊下を走り出した。

同じ形の窓が、後ろへ流れていく。

さっきが苦しすぎたせいで、苦しいはずの息が、ぜんぜん苦しく感じない。

階段を下りると、靴箱で待っていたサクラが驚いたようにこちらを見ていた。その顔を見て、安心して、大きく息を吐いた。

 

 

 

あの空間は、別の次元だったんだ、と感じてしまうことに内心苦笑しつつ、納得してしまう。

それ以外に、説明できるだろうか、あの風景を。

 

 

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ユゥイの性格が分からないのでとりあえずドラゴン読む前に書いちゃおうぜ☆ってゆう

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