「ありがとー黒りんー。いいこいいこー」
「ガキでも犬でもねぇんだから撫でんな!」
「えぇー。うえーん黒ぽんがぐれたぁ」
「泣き真似もやめろ。・・・はー。病人なんだからおとなしくしとけよ」
たく、そういってファイのいる布団の横の棚に慣れた手つきでお粥の入った小鍋を置くと、ぺたりとファイのおでこに手のひらを乗せた。
「やたらと器用に風邪ひくな。テスト休みに。昨日まではピンピンしてたじゃねぇか」
「頑張りましたー」
そういいながらもごほごほと咳をする様子は、とてもそんな余裕があるとは思えないが一応、そうか、と言って頭を撫でた。
「こどもじゃないので止めてくださいー。せっくっはっらっ!」
「男が男にやってる上に恋人だろうが」
「きゃーいきなり黒様が素直になったー。死んじゃうかも」
熱で顔がもともと火照っているので変化はないが、たぶんいつもだったら赤いのだろう、と思いながらお粥のフタを開ける。
あがる湯気に、わぁ、と小さくファイがうれしそうに言った。
「どんどん上手に作れるようになってくねぇ」
「てめぇが何回も風邪引くからな」
「あっひどい」
「この間も土日寝込んだくせに」
「もう一ヶ月も前の話じゃん」
「普通は一ヶ月単位で風邪ひいたりしねぇんだよ」
馬鹿は風邪引かないんじゃなかったっけか、と言うと無言でパンチをくらった。病人だからもともと痛くないパンチがさらにひょろひょろしている。
黙ってスプーンに食べやすい量だけお粥を掬って、ん、と前に差し出すとぱくりと条件反射のように食べた。
小さな口がもぐもぐと動くのを見て小動物を飼ったらこんな感じか、とぼんやり。
「ていうかね、」
ごくりと喉を鳴らして口を開いて出てきたのは、お代わりの言葉ではなかった。
「風邪ひいたのは黒りんのせいなんだからね」
「は、」
甲斐甲斐しく世話を焼いてやっているというのに、いきなり何を言い出すか。怪訝な表情をしながらも、ついつい腕が勝手にお粥を食べさせてしまう。
むこうも当たり前のようにぱくりとそれを頬張り、咀嚼し、飲み込んだ後、もう一度口を開けた。
「黒りんころがちゅーするときにオレに病原菌渡してくるから、オレが二人分の風邪を引くんですー」
「どんな理屈だそれは」
呆れながらも腕を動かして、ファイがお粥を咀嚼する。
「だからねー」
ごくん
「今持ってる分、全部風邪引いてあげるから、ちょうだい」
そういうとファイは、ん、と口を閉じてこちらをじーっと見つめてきた。
あーっと、これ、は
「素直じゃねぇな」
「誰のことやらー」
素直に、してくれとも言わないこいつは、なんでこんなに可愛いのか。
とりあえず要求に応えてやってから、お粥を運ぶ腕を再び再開させた。
その様子に、ふふ、とファイが微笑むと、
「黒様が笑ってるー。めずらしー」
と嬉しそうに言った。
風邪引きさんの休日
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
風邪ひいたのでファイさんにも風邪を引かせてみた←
基本的に黒ファイはほのぼのいちゃいちゃしてればいいです。